先日、祖母が他界しました。
享年103歳、大正元年生まれ。
大往生です。
18歳で助産婦になり
22歳で助産院を開業し
請われれば昼夜を問わず
80歳近くまで自転車で駆けつけ
89歳の時骨折して歩けなくなるまで
なん千人という赤ちゃんを取り上げてきた人でした。
その後施設での生活となりましたが
毎日のように日記を書き、歌を歌い
本当に良く食べる人でした。
祖母は腕時計をいつも右手首にしていました。
赤ちゃんをお湯につける時、左手首にしていると時計が濡れてしまうからです。
50年前、私も何度も祖母の左手で
きっとその頃から大きかったこの<頭>を
支えてもらいながらお湯につけてもらったはずです。
++ ++ ++
その祖母の葬儀は浄土宗で営まれました。
南無阿弥陀仏・・・の宗派です。(因みに倉持家は道元さんの曹洞宗です)
お越しいただいたのはご近所のお寺さんの副住職さん。
年の頃は40代半ば、私より背が高く185cmはあろうかという大きな方でした。
この方丈さんが、お経を読まれるお声を発せられた瞬間
祖母の死にうな垂れていた私は、思わず顔を上げてしまいました。
何と云ったらいいのでしょう。。。
ものすごく
「いいお声」・・・だったのです。
++ ++ ++
お坊さんのお経の声は大抵の場合
あの独特の響きを、喉の奥のほうで
多少ブツブツ云うような感じで発せられます。
日本人なら誰でも「お経の真似事」的な声は出せますよね・・・あれです。
しかし、祖母にお経をあげてくださった方丈さんの声は
全然響く場所が違って「もっと上のほう」で共鳴していました。
かといってお経らしい低く鳴り響く声でなかったかと言えばそうではなく
より一層、深く、低く、ある意味力強く、鳴り響いていました。
参列者全員にお焼香がまわる、比較的長い時間
30、40分くらいでしたでしょうか
私はずっとそのお経の声に聞き惚れていました。
++ ++ ++
以前・・・
その方の声を聞くとその方の習慣的に緊張させている場所が
おおよそ見当がつく、というお話をここでさせていただきましたが
その人の声が主にどこに共鳴しているか
これも、おおよそ見当がつきます。
別にこれは声の専門家でなくてもちょっと意識すればわかります。
ただ、その人の声を自分の全体で聞くようにしてみるだけでいいのです。
そうするとだいたいその人の響いているところと同じところに
自分にも同じような振動がやってきます。
風邪ひいて苦しそうにしている人の声を聞くと
自分も喉が苦しくなってくることってありませんか?
あれと同じようなものです。
・・・人間って面白いですよね。
その方丈さんのお声は、
私の頭の「奥のほう」でずっと鳴り響いていました。
思考とかイメージとか、感情とかでもない
何かもっと生命の根源的な部分で
力強い、そしてとても心地よい響きでした。
どんどん意識が覚醒され
それと同時に心がとても穏やかになっていく
・・・そんな感じでした。
あの響きは
私の察するところでは「鼻腔」の奥の方
そして「咽頭」の上の方で最も共鳴していたのではないかと思います。
そして、実はこれ
私が今一番「鳴らしたいなあ」と思っていた場所なんです。
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情報や刺激に溢れている現代では
前頭・・・目の周りや、目の上の方ばかりが忙しく
なかなか深いリラックスを得ることはできません。
あげくに、そのせいで
生来持ち合わせる自律的な機能までもが
働きにくくなってしまっている人も少なくないと言われます。
でも、そんな時
後鼻腔、上咽頭に声を響かせてあげることで
その奥にある、自立的機能を司る「脳幹」に
心地よい刺激を与えてあげることが出来るのではないだろうか
それにより、神経を静まらせ、深い呼吸を取り戻し
安心感や落ち着きを取り戻すことが出来るのではないか
・・・このように私は考えていました。
緊張や不安でお悩みのかたとのレッスンでは
まず私の声を意識的にそこに響かせていきながら
幾つかの自分の使い方のアイデアをお客様に提供させて頂いています。
そうすることで、これまではまずまずのよい結果がでております。
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そして、まさに祖母の葬儀式場に響き渡る方丈さんの唱えるお経の声は
私の「脳幹」に響き続けていたのです。
葬儀式場は祖母を失った悲しみの気持ちに満たされながらも
同時に何かしら、穏やかで心安らかな雰囲気にも満たされていました。
方丈さんのお声の響きが少なからずそれを助けてくれていたと私は思います。
祖母も何一つ思い残すことなく成仏されたことだろうと思います。
彼・・・方丈さん・・・は
「その(成仏の)お手伝いをさせていただきました」と
その後、ご自身でハッキリとおっしゃっていました!
その方丈さんは芝の増上寺で何年も修行を積まれてきたそうです。
お坊さんのプロの技を見せてもらった(聞かせてもらった)
・・・そう感じた、祖母の葬儀でのエピソードでした。
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