40代前半、わたしはぎっくり腰を二度経験しました。
舞台俳優でしたから、身体づくりとメンテナンスは毎日ちゃんとやる私でした。
からだにはちょっと自信がありました。
だから、一度のみならず二度も腰が砕けるように痛くて、まったく身動きがとれないという経験は私には本当にショックでした。
腰痛にはさまざまな原因があると聞きます。姿勢の悪さや運動不足が原因とか、内臓に問題があるとか、心的ストレスによっても腰痛は起こるそうです。
40になりたての頃、私は父を病で亡くしたばかりでした。それは私にとっては突然のことでした。その後、それ迄の人生で経験したことのない幾つかの問題に直面し毎日毎夜酷いストレスにさらされていました。
その挙句のぎっくり腰の連続パンチでした。
私はわたし自身をちっともコントロール出来てないということを嫌という程思い知らされました。たとえそのストレスで腰痛が発症したとしても、俳優として自分のからだの面倒が見られていなかったのです。治療を終えて、とりあえず痛みが消えたわたしは、知人から伝え聞いたアレクサンダーテクニークのレッスンを受け始めました。
わたしはわたしのことをもっと知りたかったのです。幾つか抱いていたテーマのなかで、腰痛をもらたした自分のからだへの関心はもちろん一番最初にありました。
元々身体の観察習慣と身体意識は俳優の訓練で磨いてましたので、アレクサンダーテクニークは私のとってとても相性がよく、レッスンを受け始めるや否や、私はどんどん変化していきました。
アレクサンダーテクニークの重要な原理の一つに「使い方が機能を決定づける」というものがあります。
レッスンは現時点での機能にそった最もスムーズな動きを体験できますが、その後その使い方をすればするほど身体の機能が全般的に向上改善されていくのです。
わたしのような、腰痛の起きやすかったからだも、アレクサンダーテクニークを使う回数や時間が増えていくことによって、腰痛の起こりにくいからだに変わっていったのでしょうか。テクニークを習い始めてから私は一度も腰痛を再発しておりません。
私はアレクサンダーテクニークを使う回数や時間を増やしたかったのでいろいろ考えました。
歯を磨く時、ドアを開けるとき、メールを打つ時、いろいろ試みましたが、やはり一日でする行動のなかで「歩く」のが一番多いと思いました。歩くときにアレクサンダーテクニークを使うとができれば、1日のなかでかなり長い時間「自分の使い方」を考えることができるだろうと思ったのです。加えて、椅子に座っての行動などに比べ、全体的でダイナミックだとも思いました。
そこで私は歩く時には必ずアレクサンダーテクニークを使うと決めました。テクニークを使う指示の文言は変化していきましたが、今も使っているのは「ふわり…頭が脊椎の上で繊細に動けて、その頭の動きに自分の全体が着いていく」です。これは正解でした。軽い有酸素運動でもあるからでしょうか。歩く時にアレクサンダーテクニークを使うと、頭もクリアで自分のからだの動きや思考への気づきが大変大きいのです。
認定教師になりプロとしてアレクサンダーテクニークを教えるようになった今でも、「歩く」というアクティビティはたくさんのことをシンプルに学ばせてくれます。毎日の様にその「歩く」という動きの質はラクにスムーズに広がりを得ながら変化し続け、その度に「人間というものは本当によく出来ているんだなあ」と実感しています。
硬い言葉で言えば「二足歩行」は、もっとも人間らしいうごきと言えなくもありません。その先の様々な行動に発展していくためにも役立つことがたくさんあることでしょう。
みなさんもご自分の「歩き」…考えてみませんか?
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